旅人は語る

昨日、中田英寿が久しぶりにテレビ番組に生出演しているところを見た。

今の肩書きは「旅人」らしい。引退以降、1年3ヵ月の間に40カ国以上の国と地域を周っているとのこと。中継はドバイから行われていたのだが、「これまでの旅でいくらくらい使いましたか?」という質問に対して、「自分では把握していない、会計士に聞かないと」といった回答をしているの見て、中田英寿という人間と彼をテレビ画面を通じて見ている人々との間には、日本−ドバイ間という物理的な距離以上にかけ離れたものがあると素直に感じてしまった。

一つ非常に引かれたのは、「旅を通じてどんなことに気づきましたか?」と聞かれた時に彼が発言した、「特定の場所に余るほどあるものが、別の場所には全く足りていない、ということが非常に多いように思う。余っているところから足りないところへと移すことを考えていきたい」といった主旨のコメント。

「ある」所から「無い」所へ移すというのは、経済活動の最も基本的な要素の一つであって、彼がそうしたことを意識しているかいないかはわからない。ただ、経済活動は「差」を生じさせる力と埋め合わせる力を併せ持っているという現実を目の当たりにすることによって、彼自身何かを感じたのかもしれない。もちろんこれは想像にすぎないが、想像するのは自由だし、圧倒的な財を持っている人間として彼が今後どんな行動を取るのかについて、少し興味が湧いてきた。