信頼と緊張と

一般的に、それぞれの立場によって生じる利害が異なるというのが組織というものだと思うが、信頼感と緊張感のバランスはどちらにも一方的に振れすぎては望ましい姿とは言えないのかもしれない。信頼感が強すぎると一歩間違えれば「なあなあ」な関係になってしまうし、緊張感が強すぎるといつまでたっても物事がスムーズに進まなくなってしまう。

もちろん、組織の置かれている立場によってこれらのバランスの配分は変わってくる。ある組織間では5対5が最も望ましいこともあるだろうし、7対3くらいの方がかえって円滑な関係を築けることもあるだろう。しかし、組織の関係とはいえ人間同士の関わり合いの積み重ねである以上、そのバランスは常に崩壊へと向かうベクトルを持っているとも言える。

例えば、ある行為を規則で禁止した場合、規則を定めた側と監視される側との間には緊張関係が生まれる。おそらく始めのうちはお互いにお互いを意識し合うから緊張関係は継続されるだろう。規則を破って罰を与えられる人間が出てくることで、それが強められることも考えられる。しかし、時間が経ち禁止行為が見られなくなっていくにつれて、監視する側の関心は薄れていく。そしていつしか「みんなやらないだろう」といった考えが生まれ、規則が有名無実化していく。

得てしてこういう状況に陥った時、禁止していた行為を犯す人間が出てくるわけだ。そして再び訪れる緊張関係。結局、人間は常に自らの立場でしか物を考えず、自分の利害を一番に優先して行動する存在らしい。歴史を振り返ってみても、本質は似たりよったりで、長い間飽きもせずに同じ事を繰り返してきたと言えるし、たぶんこれからも繰り返し続けることになるのだろう。